工場の設備投資には多額の資金が必要であり、経営者にとって大きな決断となるでしょう。「老朽化した機械を
入れ替えたいが資金が厳しい」「電気代の高騰を省エネ設備で抑えたい」といった悩みを抱えている方は少なく
ありません。
この記事では、工場の新築や設備導入に活用できる2026年の主要な補助金制度について解説します。どの補助金
が自社に合っているのか、どうすれば採択されるのかを整理しました。読み終わる頃には、自社が次に取るべき
アクションが明確になるはずです
工場補助金とは、国や自治体が製造業などの中小企業に対して、設備投資や販路開拓にかかる費用の一部を給付
する制度のことです。まずは制度の基本的な性質を正しく理解し、融資との違いを把握しておきましょう。
1.国や自治体が経費の一部を支援する制度
補助金は、企業が支払った経費の「一部」を国が後から補填してくれる仕組みです。例えば「補助率3分の2」の
制度であれば、3,000万円の機械を買った後に申請することで、最大2,000万円が戻ってくるイメージを持ってくだ
さい。ただし、あくまで「事業を実施するために必要な経費」を支援するものであり、単にお金がもらえるわけ
ではありません。

このように、補助金はタイミングと使い道が厳密に決められています。いつでも申請できるわけではないため、自
社の投資計画と公募スケジュールを合わせることが最初のステップとなります。
2.融資とは異なり原則返済が不要となる
銀行からの融資と補助金の最大の違いは「返済義務の有無」です。補助金は借金ではないため、受け取ったお金を
返す必要はありません。これにより、企業のバランスシートを傷めずに大型の投資が可能になります。ただし、一
定の利益が出た場合に一部を国に納める「収益納付」という例外ルールが存在することもあります。

返済不要というメリットは強大ですが、その分だけ審査は厳格です。単に「欲しいから」という理由では通らず、そ
の投資によってどれだけ会社が成長し、ひいては日本経済に貢献できるかをアピールする必要があります。
2026年現在、製造業の皆様が注目すべき補助金はいくつか存在します。それぞれ目的や対象経費が異なるため、自社の
やりたいこと(設備の更新なのか、新分野への進出なのか)に合わせて選ぶことが重要です。主要な4つの制度を比較
しながら見ていきましょう。

1.設備投資に強いものづくり補助金
製造業にとって最も王道と言えるのが「ものづくり補助金」です。この制度は、革新的な新製品・新サービスの開発のため
の設備投資を支援します。
例えば、最新のNC旋盤を導入して新製品開発を行ったり、品質管理システムを入れて革新的なサービス提供体制を構築した
りする場合
に適しています。
注意点として、既存の製品・サービスの生産プロセスの単純な改善・向上を図る事業は補助対象外です。あくまで
「新製品・新サービス開発」が必須となります。長年続いている制度ですが、近年は「大幅な賃上げ」を行う企業に
対して補助上限額を引き上げる措置が取られています。
単に機械を買うだけでなく、それによって従業員の給与を上げられるような高付加価値な経営計画が求められているのです。
2.光熱費削減を狙う省エネ補助金
工場のランニングコスト削減に直結するのが「省エネ補助金(省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金)」
です。古くなったキュービクルや空調、ボイラー、コンプレッサーなどを、エネルギー効率の高い最新機種に更新する場合
に使えます。
この補助金の審査では「省エネ効果がどれくらいあるか」が数値で厳しく問われます。そのため、メーカーや販売店と協力
して「更新前と更新後のエネルギー消費量のシミュレーション」を正確に出すことが採択の鍵となります。電気代やガス代
が高騰している今、コスト削減と補助金受給のダブルメリットがある人気の制度です。
3.人手不足を解消する省力化補助金
「中小企業省力化投資補助金」は、人手不足に悩む企業が、作業を自動化・効率化する製品を導入する際に使える比較的新
しい制度です。この補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2つの類型があります。
「カタログ注文型」は、あらかじめカタログに登録された製品の中から選んで導入する方式で、複雑な事業計画書を一から
書く負担が少なく、簡易な申請プロセスで利用できるのがメリットです(補助上限最大1,500万円)。「一般型」は、個別の
現場や事業内容に合わせた設備導入・システム構築など、オーダーメイド性のある多様な省力化投資を支援します(補助上
限最大1億円)。
工場内の搬送ロボットや、自動検品システムなどが対象になる可能性があります。製品がカタログに登録されているかどう
かを、販売代理店に確認してみると良いでしょう。
4.大規模転換には新事業進出補助金
2026年度より「事業再構築補助金」は「新事業進出補助金」として再編されました。既存の事業とは異なる新しい分野に挑
戦する場合に使えます。例えば「自動車部品の製造ラインを縮小し、新たに航空機部品の製造ラインを立ち上げる」といっ
たケースです。
この補助金は金額規模が大きく(最大9,000万円)、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかを必ず含むことが必
須要件です。建物の改修費や建築費も対象経費に含まれるのが特徴です。ただし、単なる既存事業の延長(機械の入れ替え
だけ)では対象にならず、思い切った事業転換のストーリーが必要です。審査のハードルは高めですが、会社を大きく変え
たい場合には最有力候補となります。
多くの方が疑問に思うのが「工場の建物を建てるお金も補助されるのか?」という点です。結論から言うと、建物自体(ハ
コモノ)に対する補助は非常に限定的です。機械装置と違って転用や目的外使用が容易であるため、国も慎重になっている
背景があります。
1.建物の建設費が出る制度は限定される
一般的な「ものづくり補助金」では、基本的に建物の新築や増改築費用は対象外です。あくまで工場の中に設置する「機械
装置」や「システム」が対象となります。基礎工事や電気配線工事などは機械設置に必須であれば認められることもありま
すが、建屋そのものの工事費は自己負担となるケースがほとんどです。
一方で、2025年に新設された「中小企業新事業進出補助金」(事業再構築補助金の後継制度)では、建物費が補助対象に含
まれています。ただし、建物費の新築(建築物の購入費)は原則対象外となっており、建物の改修費用が主な対象となります。

このように、制度によって「どこまで出るか」の線引きが明確に異なります。申請前に公募要領の「補助対象経費」のページ
を必ず熟読し、工務店の見積もりの内訳と照らし合わせる作業が不可欠です。
※事業再構築補助金は2025年3月の第13回公募をもって新規申請が終了しました。2026年以降は「新事業進出補助金」と「もの
づくり補助金」が統合され、「新事業進出・ものづくり補助金」として実施される予定です。
2.中小企業新事業進出補助金なら建物費が対象になり得る
中小企業新事業進出補助金は建物費(改修費)が対象になり得る貴重な制度です。ただし、これも「ただ工場を新しくしたい」
という理由では通りません。
「新しい事業を行うために専用の建屋が必要である」という論理構成が求められます。 また、建物の新築は原則対象外ですが、
補助事業の実施に真に必要不可欠であり、既存の建物を改修する等の代替手段がないことを合理的に説明できれば、「新築の
必要性に関する説明書」の提出により例外的に認められる場合があります。
建物費が認められるハードルは高いため、建築計画と事業計画の整合性を緻密に設計する必要があります。なお、機械装置・
システム構築費または建物費のいずれかを含むことが申請の必須要件となっています。H3:自治体の独自制度を確認する必要が
ある国の補助金だけでなく、都道府県や市区町村が独自に行っている「工場立地助成金」や「企業誘致補助金」も見逃せません。
これらは地域経済の活性化や雇用創出を目的としているため、工場の新設や増設に対して手厚い支援を行っていることがあります。
・固定資産税の減免:新しい工場や償却資産にかかる税金を数年間安くする
・雇用助成金:地元の人を新規雇用した場合に一人あたり数万円を支給する
・立地補助金:土地取得費や建物建設費の一部を補助する(億単位になることも)
これらの情報は自治体の商工課や企業誘致サイトに掲載されています。「〇〇県工場立地補助金」といったキーワードで検索し、
地元の制度を洗い出してみることを強くお勧めします。
補助金申請は書類作成の手間がかかりますが、それを補って余りあるメリットが経営にはもたらされます。単にお金がもらえる
こと以外にも、会社の体質を強化する副次的な効果が期待できるのです。
1.導入コストが下がり資金繰りが改善する
最大のメリットはやはり金銭的な負担軽減です。例えば3,000万円の設備投資をする際、1,000万円の補助金が入れば、実質負担は
2,000万円で済みます。これにより、投資回収期間(ROI)が大幅に短縮されます。

浮いた資金を運転資金に回したり、さらなる追加投資に使ったりすることで、経営の安全性を保ちながら攻めの姿勢を維持できます。
特に金利上昇局面においては、借入総額を抑えられることの意義は非常に大きいと言えます。
2.計画策定を通じて経営課題が整理される
補助金を申請するためには、詳細な「事業計画書」を作成する必要があります。現状分析、市場調査、競合優位性、数値計画などを
言語化するプロセス自体が、経営者にとって貴重な棚卸しの機会になります。
「なんとなく必要だから買う」のではなく、「この機械を入れることで、どの工程のボトルネックが解消され、利益がいくら増える
のか」を論理的に考えることになります。
この過程で自社の強みや弱みが明確になり、採択・不採択に関わらず、その後の経営判断の精度が高まるという経営者は多いものです。
3.金融機関や取引先からの信用が高まる
補助金に採択されたということは、「国がその事業計画の将来性や妥当性を認めた」という一つのお墨付きを得たことになります。
これは対外的な信用力(クレジット)の向上に繋がります。特に金融機関に対しては、「補助金が出るなら融資のリスクが下がる」と
判断されやすくなり、設備資金のつなぎ融資がスムーズに進む効果があります。
また、Webサイトや名刺に「〇〇補助金採択事業」と記載することで、取引先に対する技術力や経営安定性のアピール材料としても活用
できます。
良いこと尽くめに見える補助金ですが、実務上はいくつかのハードルやリスクが存在します。これらを知らずに進めると、「資金が
足りなくなった」「後から返還を求められた」といったトラブルになりかねません。デメリットやリスクについても正しく理解して
おきましょう。
1.経費は全額自己資金で先払いが必要
最も誤解されやすいのがお金の入金タイミングです。補助金は原則として「後払い」です。設備の発注・納品・支払いをすべて自社
で済ませた後に、その領収書や証拠書類を国に提出して初めて入金されます。
つまり、一時的には設備投資額の全額を、手元の現金か銀行融資で立て替える必要があります。「手元にお金がないから補助金を使
う」という考えでは、支払いのタイミングで資金ショートを起こしてしまいます。つなぎ融資(POファイナンス等を含む)の相談を
銀行と早めに進めておくことが必須条件です。
2.採択後も事務処理や報告義務が続く
採択通知が届いたら終わりではありません。むしろそこからが事務作業の本番です。「交付申請」を行い、機械を発注し、納品され
たら写真を撮って報告し、入金された後も5年間にわたって「事業化状況報告」を行う義務があります。

これらの事務作業を怠ったり、書類に不備があったりすると、補助金が減額されたり、最悪の場合は交付決定が取り消されたりする
こともあります。専任の担当者を置くか、コンサルタントのサポートを受ける体制を整えておくことが望ましいでしょう。
3.必ず受給できるわけではなく審査がある
補助金は要件を満たせば全員がもらえる給付金とは異なり、予算の枠内で優秀な計画から順に選ばれるコンテスト形式です。人気の
ある補助金では、採択率が30%〜50%程度になることも珍しくありません。どんなに素晴らしい設備投資計画でも、申請書の書き方が
悪かったり、審査員の求めるポイントからズレていたりすれば不採択になります。
「補助金をあてにして工事を発注してしまったが、落ちてしまったので全額自己負担になった」という事態は絶対に避けなければな
りません。採択通知を受け取るまでは、正式な発注や契約を行わない(行ってはいけないルールの場合が多い)点に注意してください。
競争率の高い補助金審査を勝ち抜くためには、単に要件を満たすだけでなく、加点要素を積み上げ、説得力のあるストーリーを描く
必要があります。審査員は膨大な数の申請書を見るため、短時間で「この会社に投資すべきだ」と思わせる工夫が必要です。
1.加点項目を押さえて賃上げ等を計画する
多くの補助金には、基本要件とは別に「加点項目」が設定されています。これを満たすことで審査時の点数が底上げされ、採択ライン
に近づくことができます。2026年のトレンドとしては、「賃上げ」や「パートナーシップ構築宣言」「働き方改革関連(くるみん・え
るぼし)」「健康経営優良法人認定」などが重視されています。
特に「賃上げ」については、ものづくり補助金では大幅な賃上げに取り組む事業者に補助上限額の上乗せ(100万円~1,000万円)や、
最低賃金引上げに取り組む事業者に補助率2/3への引き上げといった優遇措置が設けられています。

特に「パートナーシップ構築宣言」などは、Web上で宣言するだけで取得できる比較的容易な加点です。ただし、ポータルサイトへの
登録から公開まで通常約10日程度かかるため、余裕を持った準備が必要です。取りこぼしがないように、公募要領の加点一覧リスト
を一つひとつチェックし、可能なものはすべて適用させる姿勢が大切です。
2.具体的で実現性の高い事業計画を作る
審査員が見ているのは「夢物語」ではなく「実現可能なビジネスプラン」です。「売上が2倍になります」と書くなら、なぜ2倍になる
のかの根拠(市場データ、既存顧客からの受注確約、生産能力の具体的な数値変化など)を示す必要があります。抽象的な表現は避け、
数字と固有名詞を使って具体化しましょう。
「生産性が向上する」ではなく、「月間の加工数が1,000個から1,500個になり、残業時間が月20時間削減される」と書くのです。また、
スケジュールや社内体制についても、誰がいつ何をするのかが明確になっていると、実現性が高いと評価されます。
3.認定支援機関
や専門家の力を活用する[佳早8.1]補助金の申請では、認定経営革新等支援機関(銀行、税理士、商工会議所、中小企業診断士など)
の確認や支援を受けることが推奨されます。
**ただし、2026年時点では、ものづくり補助金や新事業進出補助金において認定支援機関の確認印は必須要件ではありません。
**とはいえ、計画策定の段階からプロのアドバイスを受けることが採択への近道であることは事実です。
新事業進出補助金の公募要領では「申請者は事業計画の作成、実行及び成果目標の達成に責任を持って取り組む必要がある」とされて
おり、「検討やブラッシュアップのために認定支援機関を含む外部支援者等の助言を受けることは差し支えない」とされています。
つまり、支援を受けることは可能ですが、申請者自身が主体的に事業計画を作成することが求められています。
工場系の補助金に強いコンサルタントであれば、業界特有の事情を汲み取った上で、審査員に伝わりやすいロジックを構築してくれます。
成功報酬型の支援会社も多いため、自社のリソースだけで抱え込まず、外部の知見をうまく活用することをおすすめします。
なお、2026年1月に改正行政書士法が施行され、補助金申請書類の作成代行は行政書士のみが行える業務となりました。認定支援機関や
専門家に依頼する際は、「助言・アドバイス」の範囲なのか「書類作成代行」なのかを明確にし、適法な支援を受けることが重要です。
この記事の要点をまとめます。
・工場補助金は原則返済不要だが、後払い制であり、まずは自己資金やつなぎ融資の確保が必要である。
・2026年は「ものづくり」「省エネ」「省力化」「新事業進出」が主要な選択肢であり、工場の新築費が出るのは「新事業進出補
助金」など一部に限られる。
・採択されるためには、賃上げ等の加点項目を網羅し、数値的根拠のある事業計画書を作成することが不可欠である。
補助金は、リスクを抑えて工場を進化させるための強力な武器です。しかし、制度は複雑で毎年ルールが変わります。まずは自社がやり
たい投資内容を明確にし、早めに金融機関や専門家に相談することから始めてみてください。適切な準備が、工場の未来を切り拓く第一
歩になります。