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28 工場の災害対策:主なリスクの種類とBCP策定のポイント

2026/06/30 更新:2026/06/30

工場の災害対策:主なリスクの種類とBCP策定のポイント

 

工場の安全管理や防災対策に悩む担当者に向けて、工場特有の災害リスクと具体的な対策手順を解説します。
この記事では、労働災害の傾向から平常時の防災計画、そして事業継続計画(BCP)の策定ポイントまでを詳しく紹介します。読み終わると、自社に不足している安全対策が明確になり、現場の改善アクションへとスムーズに移行しやすくなります。

 

 

Ⅰ 工場における災害対策の重要性と背景

 

工場の災害対策は、企業活動を継続し、働く人々の命を守るために非常に重要な取り組みです。工場内には大型の機械設備や危険物が多数存在し、一度災害が発生するとその被害は広範囲に及びます。
例えば、火災によって生産ラインがストップすれば、納期遅延を引き起こし、莫大な経済的損失を生むだけでなく、周辺地域への環境被害をもたらす危険性があります。これらは取引先からの信頼失墜やサプライチェーン全体への停滞を招くため、事前の十分な備えと計画的なリスク管理が求められます。
以下に工場を取り巻く対策の目的と背景を整理した表を提示します。

       

 

1.工場特有のリスクと被害の甚大さ

工場内には多くの可燃物や高圧ガス、大型機械が配置されており、一般的なオフィス環境とは比べ物にならないリスクが存在します。 小さな機器の異常が連鎖し、工場全体を巻き込む大事故に発展する恐れがあります。
さらに、特殊な化学薬品を使用する現場では、有毒ガスの発生によって周辺の住民にまで影響を及ぼすリスクが伴います。 このように、工場特有の環境がもたらす危険性を正しく認識し、先手を打って対策を講じることが重要です。 想定される最悪のシナリオを洗い出し、それに対する防御策を二重三重に用意しておくことが推奨されます。

 

2.従業員の安全確保と企業の社会的責任

企業は、そこで働く従業員が安全に業務を行える環境を提供する義務を負っています。具体的には「労働安全衛生法」に基づき、従業員の危険を防止するための措置を講じなければなりません。万が一労働災害が発生すれば、被害を受けた従業員やその家族に多大な苦痛を与えることになります。
また、安全管理の不備による事故は、法令違反として行政処分の対象になるだけでなく、社会的な信用を失う結果を招きかねません。安全な職場環境を維持し続けることは、企業の持続的な成長を支える基盤となります。社会的責任(CSR)を果たす意味でも、災害対策への投資は経営上の重要課題と言えます。
参考:労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索

 

Ⅱ 工場で発生しやすい災害の主な種類

工場で発生する災害は、大きく分けて労働災害と自然災害、そして火災などの重大事故に分類されます。それぞれの特性を理解し、現場の実態に即した適切な対策を講じることが重要です。
厚生労働省の「令和5年労働災害発生状況」によれば、休業4日以上の死傷災害のうち製造業は約20%を占めており、他の業種と比較しても高い水準にあります。
ここでは、工場で直面しやすい災害の種類とその特徴を表にまとめます。

        

         参考:令和5年の労働災害発生状況を公表|厚生労働省

 

1.機械設備による労働災害

機械設備によるはさまれや巻き込まれは、製造業における労働災害の中で上位を占める事故形態です。厚生労働省の資料によれば、これらの災害は保守作業やトラブル対応などの非定常作業時に多く発生しています。
例えば、機械の運転を完全に停止せずに、詰まった製品を取り除こうとした瞬間に巻き込まれるケースです。このような事故を防ぐためには、作業手順の徹底や、経験の浅い作業員に対する継続的な安全教育が求められます。 日常的な作業の中に潜む危険を軽視せず、常に基本ルールを守る姿勢が重要です。

 

2.火災や爆発・危険物漏洩事故

化学物質や可燃性ガスを扱う工場では、火災や爆発のリスクが常に伴います。 引火性の高い物質が漏洩し、わずかな静電気や火花に触れるだけで大事故に発展するケースが少なくありません。
被害が工場内にとどまらず、周辺環境にまで深刻な影響を及ぼす可能性があるため、徹底した管理体制が求められます。 危険物エリアの定期的な点検や、異常発生時の緊急遮断システムの導入が有効な対策となります。
また、従業員に対して消火器の正しい使い方や、初期消火の限界を見極める教育を行うことも大切です。

 

3.地震や水害などの自然災害

日本は地震や台風などの自然災害が多く、工場も甚大な被害を受けるリスクを抱えています。 大規模な地震が発生すると、建物の倒壊や設備の破損だけでなく、長期間の停電や断水によって操業が不可能になります。
また、近年の異常気象に伴う豪雨による浸水被害も増加傾向にあります。そのため、工場の立地条件に応じたハザードマップの確認や、浸水対策などのハード面の備えが重要になります。 地域の特性を考慮し、水防用の土嚢の配備や、重要な設備を高所に配置するなどの工夫が推奨されます。

【関連記事】工場の浸水対策は何から始めるべきか?7つの具体的な方法と選び方を解説
【関連記事】工場の耐震は操業しながら可能?費用や改修方法・BCP対策を徹底解説

 

 

Ⅲ 平常時から取り組むべき工場の防災対策

災害の被害を最小限に抑えるためには、平常時からの地道な防災対策が重要です。
ここでは、日々の業務の中で実践すべき取り組みや、設備の安全基準について解説します。 ハード面とソフト面の両方からアプローチすることで、より強固な防災体制を築くことができます。平常時に取り組むべき主な対策項目について表で示します。

      

 

1.リスクアセスメントとKY活動の徹底

リスクアセスメントは、作業工程に潜む危険性を事前に洗い出し、その重大性に応じて対策を講じる手法です。現場の作業員が主体となって行うKY活動(危険予知活動)と組み合わせることで、一人ひとりの安全意識を高める効果が期待できます。
作業前に「どのような危険が潜んでいるか」をチームで話し合い、安全な作業手順を確認する習慣をつけることが重要です。 これにより、慣れや不注意によるヒューマンエラーを未然に防ぐことが可能になります。
定期的に現場を巡回し、新たなリスクが発生していないかをチェックする仕組み作りも求められます。

 

2.設備の安全化とフェイルセーフの導入

作業員の注意喚起だけでなく、設備自体の安全性を高める工夫も重要です。 人間がミスをしても重大な事故につながらないようにする、フェイルセーフの考え方が推奨されます。
例えば、安全カバーを取り外すと機械が自動的に停止するインターロック機構の導入が挙げられます。このような物理的な安全対策を施すことで、経験の浅い作業員でも安全に業務を遂行できるようになります。
安全装置を意図的に無効化するような行為を厳しく禁じ、正しい使用方法を現場に浸透させることが重要になります。

 

3.防災マニュアルの整備と定期的な避難訓練

いざという時に迅速に行動するためには、実効性のある防災マニュアルの整備が求められます。マニュアルには、火災発生時の初期消火の手順や、地震時の緊急避難ルートなどを具体的に記載します。
さらに、作成したマニュアルに基づいて定期的な避難訓練を実施することが重要です。 訓練を通じてマニュアルの改善点や課題を洗い出し、継続的に見直しを行うことで、現場の対応力を高めることができます。夜間や休日など、人員が少ない時間帯の災害を想定した訓練を取り入れることも有効な手段と言えます。

 

Ⅳ 災害発生時の初動対応とBCP(事業継続計画)

どれほど予防策を講じても、災害の発生を完全に防ぐことは困難です。そのため、万が一災害が発生した際の初動対応と、早期復旧に向けたBCP(事業継続計画)の策定が企業の存続を左右します。 迅速な意思決定と情報伝達ができる体制を構築することが重要です。
災害発生時の段階的な対応フェーズを表に整理します。

      

 

1.人命優先の初動対応と緊急停止プロトコル

災害発生直後は、何よりも従業員の人命確保を最優先に行動します。強い揺れを感じたり火災報知器が作動したりした際は、直ちに安全な場所へ避難し、安否確認を行います。
同時に、二次災害を防ぐために稼働中の設備を安全に停止させる緊急停止プロトコルを実行します。各設備ごとに「誰が・どのように停止させるか」を事前に定めておくことで、パニック状態でも的確な操作が可能になります。
有毒ガスの漏洩などの危険が伴う場合は、専用の保護具を着用した限られた人員のみで対応にあたることが推奨されます。

 

2.対策本部の設置と情報伝達手段の確保

被害状況を正確に把握し、全社的な対応を指揮するために、現地に災害対策本部を設置します。 通信インフラが寸断される事態を想定し、衛星電話やトランシーバーなどの代替通信手段を確保しておくことが重要です。
対策本部では、従業員の安否情報や建物の損壊状況、周辺地域の情報を集約し、経営層や関係機関へ迅速に報告する役割を担います。
正確な情報に基づいた指揮命令を行うことで、現場の混乱を鎮め、組織的な復旧活動へと移行することが可能になります。

 

3.早期復旧に向けたBCPの策定ポイント

BCPは、被災後の中核事業をいかに早く復旧させるかを定めた計画です。代替生産拠点の確保や、重要部品の在庫積み増しなど、サプライチェーンの寸断に備えた対策を盛り込みます。
内閣府の事業継続ガイドラインなどを参考にしながら、自社の事業特性に合わせた復旧目標時間や優先業務を明確に設定します。定期的な見直しと従業員への教育を通じて、BCPの実行力を高めることが重要です。 計画を作って満足するのではなく、実際の災害を想定した図上訓練を反復することが求められます。

参考:内閣府 事業継続ガイドライン

 

Ⅴ 【事例】工場災害対策の具体的な取り組み

ここでは、実際に国内の工場で行われている災害対策やBCPの対応事例を紹介します。 具体的な企業の取り組みを知ることで、自社の防災体制を構築する際の参考にすることができます。 他の企業がどのような想定で訓練を行い、実際の災害にどう対応したのかを把握することは、実効性の高い対策を立てるうえで重要です。

 

1.JSR鹿島工場における大規模地震を想定した総合防災訓練の事例

JSR株式会社の鹿島工場では、年間4回の工場総合防災訓練を実施しています。毎回、発災するプラントや災害の想定内容を変えており、緊張感あふれる訓練となるよう工夫している点が特徴です。2013年度には、大規模地震の発生によって同時に2か所から発災したという想定のもとで訓練を行いました。

参考:JSR株式会社鹿島工場事例

 

2.日本血液製剤機構千歳工場における北海道胆振東部地震でのBCP対応事例

日本血液製剤機構の千歳工場では、2018年の北海道胆振東部地震において大規模停電に見舞われました。 しかし、日頃からBCPに基づく対策を行っていたため、被災後すぐに災害対策本部を立ち上げ、被害状況の確認と非常用発電機の稼働を実施しました。
復電までの間、昼夜を問わず非常用発電機への燃料給油を継続し、大量に保管していた血漿分画製剤などの品質を守り抜きました。 この事例は、平時からの備えと実践的なBCPがいかに重要であるかを示しています。 万が一の停電に備えたエネルギー確保の重要性を学ぶことができる貴重なケースと言えます。

参考:安定的・持続的に血漿分画製剤を届けるために ~千歳工場の取り組み~|一般社団法人 日本血液製剤機構

 

Ⅵ まとめ

この記事の要点をまとめます。
• 工場には火災や労働災害など特有のリスクがあり、命と事業を守るための対策が重要である
• リスクアセスメントやフェイルセーフの導入など、平常時の環境整備と訓練を行う
• 災害発生時の初動対応と、早期復旧を目指すBCPを事前に策定しておく
自社の現状を再確認し、実効性のある安全対策を今日から進めていきましょう。

 

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